世界各国では、大都市における渋滞や温室効果ガスの排出など、自動車にまつわる問題が多く取り沙汰されています。
この問題を解決する一つの方法として、IT技術であらゆる交通機関を結びつける「MaaS」の活用が注目されています。
- あらゆる交通機関をIT技術で結びつけるMaaS
- 日本におけるMaaSの活用例
- 海外のMaaS活用事例
- MaaSとスマートシティの関係
Mobility as a Service」)です。
バス、電車、シェアサイクルなど、様々な交通手段をIT技術で結びつけ、サービスの一元化を実現するのがMaaS(「日本ではタクシーや飲食の配達サービスといった限定したジャンルでのみ活用されていますが、地方自治体や一部の交通系企業が中心となり、MaaSを活用した広範囲のサービスの実験が行われています。
東京メトロは、2020年7月よりMaaSを活用した新しいサービス「my! 東京MaaS」を開始すると発表しました!
海外ではフィンランド、台湾で実用化されており、バスや電車などの乗り放題によるスムーズな移動が実現しています。
公共交通機関の活用により環境問題の解決に取り組むMaaSの構想は、IT技術によりクリーンで快適な都市生活を実現するスマートシティ構想に通じています。
交通面での利便性を高め、環境に配慮したクリーンな移動を実現するMaaSの行き着く先は、クリーンな都市そのものであるスマートシティであるといえるでしょう。
MaaSとは?
あらゆる交通機関を結びつけるMaaSとは、どのようなサービスなのでしょうか。
「Mobility as a Service」=「サービスとしての移動」
画像引用:TIME&SPACE KDDI
MaaSは「Mobility as a Service」の頭文字をとってつけられた略称です。
直訳すると「サービスとして移動」となり、多くの移動手段をITで結びつけ、目的地までの移動を簡単にするサービスとされています。
現在多くの人々が手にしているスマートフォンでは、アプリやWebページを利用して目的地までの電車の時刻や、バス・タクシーなどの利用方法を検索できます。
Google Mapに代表される地図アプリの中には、目的地を指定すれば徒歩による経路案内だけでなく、電車やバスの時刻まで提示してくれるものもあります。
MaaSはその機能をさらに発展させ、交通機関の利用方法だけでなく乗車チケットの購入や、乗車してからのチケット使用までサポートします。
さらに電車やバスだけでなく、レンタカーやレンタサイクルといった交通手段の利用も含めた、最適な移動方法を検索し、提案してくれるサービスなのです。
日本におけるMaaSの活用例
日本でもゆっくりとMaaSへの取り組みが進んでおり、地域限定での利用実験が行われています。
東京メトロが「my! 東京MaaS」をリリース!2020年7月よりスタート!
画像引用:東京メトロ
東京メトロは、東京における大都市型MaaSの活用を目指し、「my! 東京MaaS」を開始すると発表しました!
これにより東京メトロは、鉄道だけでなくシェアサイクル、タクシー、航空、コミュニティバスなどのさまざまな交通機関と連携したサービスを提供できるようになります。
新しく追加されるサービスには、以下のようなものがあります。
ひと駅歩く検索
すきま時間にリモートワークができるスペースの提案
リアルタイムな運行情報の提供
そのほかにも新しいサービスの提供が予定されており、MaaSによって東京での移動や暮らしの機能が向上すると期待されています。
移動の概念が変わる!? 「my! 東京MaaS」が始動、東京メトロアプリにMaaS機能実装へ(MOTA) #博多持株会 とです。 https://t.co/j9sbFgYYLY
— Nowhere man@博多持株会™️【公式】MAKE福岡よかろうもん😉AGAIN💯🈵 (@myuuujil) March 27, 2020
エレベーターや雨に濡れないルートを検索「my! 東京MaaS」。東京メトロら https://t.co/uqRyGFZJsy pic.twitter.com/gN8dgpo67j
— Impress Watch (@impress_watch) March 25, 2020
MaaSについての記事。
近未来化が進んでることを実感出来て楽しみ!エレベーターや雨に濡れないルートを検索「my! 東京MaaS」。東京メトロら – Impress Watch https://t.co/LaqxqW00ed
— KUZEBIZ/webディレクター×マネージャー (@kuzebiz) March 26, 2020
まずは2020年7月に東京メトロアプリがリニューアルされるとのことで、今後のサービス展開が楽しみですね!
東急とJR東日本がタッグを組んだ「izuko」
画像引用:IZUKO
東急、JR.東日本、JR東日本企画の3社合同で行われた観光型MaaS「Izuko」は、伊豆半島限定での利用実験が行われました。
実験は「2019年4月1日~6月30日まで」のフェーズ1、「2019年12月1日から2020年3月10日まで」のフェーズ2と、2回に分けて実施されています。
鉄道、バス、レンタカー、レンタサイクルといった交通機関をスマートフォンアプリで検索・予約・決済するサービスは、伊豆を利用する観光客にも好評で多くの利用者数が生まれたようです!
なにこのローカルなアプリ!と思って見てたら面白かった😋😋#Izuko pic.twitter.com/U6epWR4ooN
— かんぐちゃんぐ (@kangchanggg) April 17, 2019
スーパービュー踊り子で帰路につきます。
今回は『スマホ1つで伊豆の旅はできるか!?』がテーマでした。少し課題は感じるものの、確かに移動・観光・グルメ・体験をお財布を一切出すことなく満喫できました。さらなる進化に期待です。中継お付き合い頂きありがとうございました! #Izuko pic.twitter.com/40tIrNzIdC
— 鉄道新聞®︎ (@tetsudoshimbun) December 10, 2019
2/15 251系 スーパービュー踊り子にお別れ乗車しに伊豆急へ行ってきました
スマホがフリーきっぷになるIzukoイーストを使って伊東線伊豆急は乗り放題#Izuko pic.twitter.com/wrQtkIXJkn— 610@GTI (@610Ti) February 16, 2020
伊豆下田で足湯&フットマッサージ。これもイズコのデジタルチケット購入で体験できました。#Izuko pic.twitter.com/ROXCXJIl3D
— 鉄道新聞®︎ (@tetsudoshimbun) December 10, 2019
NECは香川県高松市でMaaSの実験を実施
NECも2020年1月、香川県高松市でMaaSの実験を実施しました。
鉄道、バス、レンタサイクル、徒歩を連携させて観光名所を巡る実験では、高松市近郊の名所をスムーズに巡る事が出来た反面、アプリの使い勝手に一部難があるなど、今後の発展に向け課題も多くみられたようです。
微妙。購入画面にたどり着けない人が続出して空振りに終わらないよう祈る。メインターゲットは誰?? / NECと広島電鉄、一日乗車券をデジタル化–広島エリアのMaaS実装に向けた第1弾 (CNET Japan) #NewsPicks https://t.co/Vd4srS7dUA
— ふりふり@ファミリーキャリア (@fulifuli_sunsun) December 26, 2019
ほう、これは良い取り組み・・・(´・ω・`) / “広島電鉄の一日乗車券を2020年3月よりデジタル化――、広島エリアでのMaaS実装にNECと着手 – クラウド Watch” https://t.co/wx7t3YGkdP #交通 #デジタル #MaaS
— 東尋坊🌸 (@9FgRkUX8Xr) December 26, 2019
実用化されているMaaSサービス
実験ばかりではなく、一部のジャンルではすでにMaaS技術を活用したサービスが行われています。
スマホアプリでタクシーを手配できる「JapanTaxi」
画像引用:JapanTaxi
スマホアプリ「JapanTaxi」では、全国47都道府県でスマホアプリを通じたタクシーの配車手配が可能となり、従来のように電話で呼び出す必要はありません。
降車時の支払いもQRコードを通じて行え、取引は非常に簡略化されています。
また法人契約にも対応しており、社員が利用した料金は全て自動的に集計後に一括請求されるため、各社員がタクシー内で支払い、後々経費を精算をする必要はありません。
Japan TaxiのUI流石だなぁ
【事前確定運賃】と表して金額記載しているのに、下の方にしれっと「表示運賃に迎車料金は含まれておりません」と書いてあり、迎車料金確認すると実は+420円かかる仕様になっている。 pic.twitter.com/clh0Gzb1VY
— みやもとようへい/ベアコ@マイクリ (@bearko_miyamoto) March 19, 2020
クレジットボタンを押すだけで簡単にコンタクトレス決済できました!JapanTaxi Tabletいいなw pic.twitter.com/ZJaBEBDfGj
— 誕生日は外出自粛な こばやん C98(火)西-さ-24b (@chikuwa328) March 24, 2020
全国に広がりを見せている「Uber Eats」
画像引用:Google Play
様々な店舗の飲食物を配達する「Uber Eats」もMaaSを活用する企業の一つです。
利用者はアプリやWebを通じて注文すれば、希望の店舗の好きなメニューが宅配され、自宅で食べることができます。
海外では自動運転やドローンを使った配達の実験も開始されており、今後さらに身近なサービスの一つに成長していくことが期待されています。
『ドローンによるマクドナルドのデリバリーをテストしています』
Uber Eats to test McDonalds delivery by drone https://t.co/eQMf5yPP1o via @MetroUK
Or you could just pop in! Now offering take out, Drive-Thru and McDelivery
— McDonaldsBrighton (@McDBrighton) March 19, 2020
海外のMaaS活用事例
日本国内では企業や自治体による利用実験が行われているMaaSですが、海外の一部の国・地域では、すでに一般での利用が開始されています。
フィンランドの「Whim」
画像引用:Whim
フィンランドの首都・ヘルシンキでは、運輸通信省が支援するMaaSアプリ「Whim(ウィム)」の実用開始からすでに2年以上が経過しています。
ウィムはアプリ上に目的地を入力すると、 電車・バス・トラム(路面電車)・フェリーといった公共交通機関に加え、レンタカー・シェアサイクル・カーシェアの利用も含んだ最適な経路を検出します。
画像引用:Whim
各交通機関の利用代金はウィムのプランにより異なっており、利用範囲や期間がプランごとに定められています。
プランごとの利用代金・範囲は以下の通りです。
プラン名 | 月額 | 対象 |
---|---|---|
Whim Urban 30 |
59.7ユーロ (約7,200円) |
電車・バス・トラム・フェリーなど市交通局の交通機関全て+タクシーは10ユーロまで |
Whim Weekend | 249ユーロ (約3万円) |
Whim Urban 30 に加え、週末はレンタカー乗り放題 |
Whim Unlimited | 499ユーロ (約6万円) |
全ての交通機関利用が無制限 |
Whim to Go | なし | 利用ごとに支払い(通常より割引あり) |
最新情報!Whim(ウィム)日本上陸決定!
Whim(ウィム)を運営するMaaS Globalは、三井不動産と提携し2019年12月より千葉県柏の葉で実験的にサービスを始めると発表しました!
MaaSの雄、Whimが19年12月から柏の葉で実験開始しているらしい。
日本も共通データ基盤MaaS Japanができ、小田急電鉄、NTTドコモ、DeNA、Japan Taxi、JALが乗り合い。移動社コンソーシアムか、Google Mapsのような移動PFか、どちらが優位に立つんだろう。
https://t.co/Y6xgAFvOym#maas #mobility— ɐsɐʍıǝunzɐʞ (@kazuneiwasa) January 26, 2020
家を借りるとサブスクでタクシー等の移動手段が利用できるMaasアプリ”Whim”。柏の葉で三井不動産が実証実験してるとのこと。利用したいし、「住むと移動を便利にする」という発想が素敵。 #NewsPicks https://t.co/op5UWFFBTO
— あべ / 離島経営🏝 (@abe_ritokeiei) February 22, 2020
柏の葉での実験の成果が気になりますね!
詳細が分かり次第、情報をアップしていきます!
台湾の「Men GO」
画像引用:MeN-Go
IT分野の成長が著しい台湾でもMaaSが実用化されています。
スマホアプリ「MeN GO」を利用することで、MRT(地下鉄)、路面電車(LRT)、バス、フェリーが乗り放題となります。
MeN GOもウィム同様にいくつかの料金プランがあり、価格に応じて利用できる交通手段が変わります。
MeN GOのプランは高ければ良いというものではなく、プランに応じて高速バスやフェリーの使い方に特典がつく構成となっています。
プラン名 | 月額 | MRT、LRT | バス(市内) | バス(高速道路) | フェリー | シェアサイクル | タクシー |
---|---|---|---|---|---|---|---|
無限暢遊方案 | 1,600TWD (約5,800円) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
公車暢遊方案 | 479TWD (約1,700円) |
○ | |||||
渡輪暢遊方案 | 1,800TWD (約6,500円) |
○※ | |||||
公車+客運暢遊方案 | 1,499TWD (約5,400円) |
○ | ○ |
※バイクの乗り入れ可
Maasとスマートシティの関係
画像引用:トヨタ公式サイト
様々な交通機関を一つにまとめるMaaSは、IT技術の力で多くの問題を解決する可能性を秘めています。
また交通機関の利用を一元化するという発想は、すべての生活をITの力で統一し、環境問題の解決を図りながら生活の質を向上させる「スマートシティ」構想と深い関係を持っています。
スマートシティとは?
「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」を『スマートシティ』と定義し、その実現に向けた取り組みを進めています。
引用:国土交通省より
移動問題の解決
現在先進国に限らず、発展途上国を含む多くの国々では、自動車を利用した移動に大きな問題を抱えています。
代表的な問題としては、多くの市民・国民がそれぞれ自動車に乗ることにより生まれる渋滞問題、駐車場不足による路上駐車問題などがあげられます。
しかし、MaaSの普及により公共機関利用が促進されることで、路上を走行し駐停車される自動車の台数が減り、多くの深刻な交通問題が解決に向かう事が期待されているのです。
自家用車削減による環境改善とコスト削減
多くの国々が環境問題の解決に取り組み、温暖化ガスを排出するガソリン車・ディーゼル車の台数を減らそうと取り組んでいます。
しかし現役で走る自動車の多くは未だ化石燃料を使用する車であり、温暖化ガスの排出低減にはまだ時間がかかりそうです。
MaaSの実用化が進むことで、各個人・家庭ごとに自動車を持つ必要性は薄くなり、台数の減少に伴って温暖化ガスの排出も低減されていくことが期待できます。
また温暖化ガス対策に要しているコストの削減にも繋がり、国や地域の経済性の向上にも良い影響がでるでしょう。
トヨタから水素・燃料電池自動車ミライなどが一般向けに販売されています。
MaaSの終着点はスマートシティ
画像引用:トヨタ公式サイト
世界各国で次々と都市計画が持ち上がるスマートシティが目指す最終的な目標は「クリーンなエネルギーを活用した質の高い生活の実現」です。
MaaSの目的もまた、公共交通機関の利用を通じて行われるエネルギー消費のクリーン化であることから、スマートシティと共通した目的を持っています。
MaaSが発展した先にあるのは、交通機関の利用にとどまらないクリーンで質の高い生活を目指す、スマートシティ構想そのものであるといえるでしょう。