現在流行の投資方法の一つである「インパクト投資」は2007年頃から広がりを見せ、年々市場規模を拡大しています。
インパクト投資とはどんな投資方法であり、近年話題のESG投資とはどんな違いがあるのでしょうか。
- インパクト投資とは何か?
- インパクト投資とESG投資の違いは?
- 日本国内におけるインパクト投資
インパクト投資とは、社会や環境に対して良い影響(インパクト)を与える事を目的とした投資方法です。
「違い」というよりは、ESG投資の中にインパクト投資が含まれている、という理解です。
GSIAは、ESG投資の手法を7つに分類しています。
世界中のESG投資額の統計を集計する- ネガティブ・スクリーニング
- ポジティブ・スクリーニング
- 国際的規範に基づくスクリーニング
- ESGインテグレーション
- サステナビリティ・テーマ型投資
- インパクト投資
- 企業エンゲージメント
この記事では、この「インパクト投資」について解説していきます
日本国内におけるインパクト投資の市場規模は、まだESG投資額の約1.4%程度です。
グローバルでの投資残高も下記の図の通り、まだまだインパクト投資の割合が少ないのは実情です。
しかし、その市場規模は年々拡大しており、大手証券会社や企業がインパクト投資に次々と参入しています。
また地方自治体と民間企業、投資会社が連携して社会問題に取り組む「ソーシャル・インパクトボンド」への取り組みも増えており、日本国内でも複数の例が生まれています。
「ソーシャル・インパクトボンド(SIB)」とは?
SIBは主に海外の発展途上国で行われる投資方法のこと。
日本でも実施例が増えており、官民一体となったインパクト投資が行われています。
まずは「ESG投資とは?」という点について詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ!
【儲かるの?】ESG投資とは?簡単に分かりやすくメリット・デメリット・リターン・パフォーマンスも解説
ESG投資の具体例やおすすめのファンド・投資信託・株式銘柄は?
インパクト投資とは?
ニュースなどで度々話題となっているインパクト投資とは、どんな投資方法を指すのでしょうか。
社会的に価値の高い投資先に限定
画像引用:三井住友DSアセットマネジメント
インパクト投資とは、投資を通じて社会や環境に良い影響(インパクト)を与えることを目的とした投資方法です。
社会的な貢献を目指す事業に対して投資を行うことで、その事業を支援し、社会的な利益を得ることを目指しています。
社会貢献と経済的な利益を両立
社会的な貢献に重点を置くインパクト投資ですが、事業に対する投資であることは他の投資方法と変わりません。
投資は最終的には経済的な利益を得る事を目的としますので、インパクト投資も当然ながら利益を得ることも目的とされます。
社会的な貢献と、自らの経済的な利益を両立させる投資こそが、インパクト投資の条件といえるでしょう。
ESG投資とインパクト投資の違い
インパクト投資と同様に、社会問題や環境など、社会貢献を重視する投資としてESG投資があります。
インパクト投資とESG投資は、どのような違いがあるのでしょうか。
インパクト投資はESG投資の一つ
画像引用:NHK
ESG投資は環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)への取り組みを重視する企業へ行う投資方法です。
環境問題の解決や社会的な貢献を目的としている点では、インパクト投資と共通の方向性を持っています。
そのため、インパクト投資はESG投資の数ある手法の一つであるとされているのです。
よりインパクトを重視し、大きなリターンが期待できる
ESG投資は、格付け企業や運用会社などが発表するESG評価を元とし、リスクを低減した長期的な投資を行う事を重視した投資方法です。
インパクト投資も同様に長期的な投資対象となりますが、ESG投資に比べ、より社会問題の解決や、社会的な価値の創出によるインパクト(影響力)の大きさを重視しています。
一般的なESG投資に比べリスクは高まりますが、社会貢献と共に大きなリターンが期待できます。
償還率195%(約2倍になった)事例もあるようですね!
最高償還率を更新|被災地応援ファンドの石巻津田水産が償還率195%を達成https://t.co/bxuXVQcDKQ#セキュリテ被災地応援ファンド #挑戦 #応援 #顔の見える投資 #セキュリテ #応援投資 #ブレンドファイナンス #インパクト投資 #ゆっくりいそげ pic.twitter.com/LpISRNMO4L
— セキュリテ/ミュージックセキュリティーズ (@ms_securite) February 21, 2020
世界的に見たインパクト投資のリターン。かなり良い。 https://t.co/X4a0kGor8s
— 山中(礼) (@reijiyamanaka) November 5, 2015
社会的インパクト投資のリターンの可能性を考えるシンポジウムが東証で開催されるとは。。。数年前では考えられないことが、実は現在の傾向でもあります。 http://t.co/koy4i8Ro3D
— Ken Shibusawa (@shib30) May 29, 2015
ただし、投資対象の規模は小さい
ESG投資は、世界的にも著名な大企業や、一国に留まらない国際的な事業を扱う企業に対して行われることがほとんどです。
それに対しインパクト投資は、比較的小規模の企業に対して行われる事が多く、非上場の企業が対象となることもあります。
そのため、ファンドとして扱う銀行・運用会社も少なく、投資の窓口が少ないのが現状です。
インパクト投資の市場規模
インパクト投資は世界中で広がりを見せていますが、日本におけるインパクト投資はどのような位置づけなのでしょうか。
市場規模は5倍に急成長
画像引用:日本における社会的インパクト投資の現状 GSG国内詰問委員会
インパクト投資は、2007年にロックフェラー財団により提唱されたと言われており、徐々に世界中で広がりを見せています。
しかし投資額全体から見れば、極一部といえる規模に留まっているのが現状です。
日本国内における2018年のESG投資額は、全体でおよそ243兆円という規模ですが、その中に含まれるインパクト投資の投資額は3,440億円と、約1.42%程度にとどまっています。
しかし、2017年におけるインパクト投資額は718億円と、2018年のわずか5分の1程度しかありませんでした。
この伸び率から、インパクト投資が非常に大きな成長を見せていることがわかります。
インパクト投資に次々と大手が参入
画像引用:野村アセットマネジメント
成長が見込めるインパクト投資に対し、大手の投資会社が次々と参入しています。
日本国内では野村アセットマネジメントが2018年10月よりインパクト投資の扱いを開始し、2020年3月現在では約1,500億円の投資残高が計上されています。
また2017年度からいち早くインパクト投資に参入していた第一生命では、これまでに未上場企業8社に対し、合計25億円の投資を行っています。
第一生命が3億円のインパクト投資、待機児童問題解決へ。保育士の労働環境向上支援 | ESG投資 | 金融・投資メディアHEDGE – 金融・投資情報メディア HEDGE GUIDE https://t.co/oShKUsEBNS pic.twitter.com/tlOqy5SoIq
— ソーシャルレンディングニュース (@social_lending_) October 7, 2019
そのほかにも、さまざまな企業がインパクト投資に参入しはじめています。
中高生向けのプログラミング教育事業を手がけるライフイズテック株式会社は、社会的課題を解決する事業を投資対象とした、新生企業投資株式会社等が運営に携わる「インパクト投資」ファンドのほか、第一生命保険株式会社、株式会社丸井グループ、山… https://t.co/pw9A84yJ2d pic.twitter.com/1NrC05TUK0
— リッターくん@スタートアップ系ニュースフィード (@ritters2u) November 15, 2019
日本のインパクト投資に新しい流れが生まれつつあります。大手介護事業者のツクイが、社会的インパクト投資や起業家育成を行うネクストシフトと共同で、ベンチャー企業等向けに投資を実施する「ツクイ・ケアテック*投資事業有限責任組合」を201… https://t.co/RZMAxXBq1E
— KIBOW社会投資 (@KIBOW_Impact) November 27, 2017
インパクト投資の仲間が増えました。Welcome!https://t.co/ha5lqec6Cu
日本生命がインパクト投資に参入。#インパクト投資 #社会起業家 #ソーシャルビジネス— KIBOW社会投資 (@KIBOW_Impact) October 24, 2017
インパクト投資への参入を検討している企業も増えています。
世界中から約3千人集まるイベントSOCAP19@SFに先週参加し、インパクト投資の実践事例について学びました📝海外では投資家だけでなく事業会社も資金や人、設備などを投下することでインパクト創出に貢献し始めており、本分野の今後の発展が期待できそうです!!GBもいよいよ来年から参入予定💪#SOCAP19 pic.twitter.com/FSWIb0mYmi
— Yasuhiko Yurimoto (@YYurimoto) October 29, 2019
自治体への積極的な投資
インパクト投資には自治体も大きな関心を示しています。
社会的な問題の解決に取り組む企業に対し民間企業が投資を行い、成果に応じて自治体が配当金を支払う「ソーシャル・インパクトボンド(SIB)」が広がりつつあります。
日本初のSIBは「糖尿病性腎症等の重症化予防SIB」
日本で行われた初めてのSIBは神戸市の「糖尿病性腎症等の重症化予防SIB」で、神戸市、社会的投資推進財団、DPPヘルスパートナーズ、三井住友銀行、SMBC信託銀行の5機関が協力し、2017年7月に導入が発表されました。
このSIBの目的は
糖尿病性腎症等の罹患者で特に人工透析への移行リスクの高い未受診及び治療中断中の人約100人を対象として、医療機関への受診勧奨及び食事療法等の保健指導を通じて重症化を予防し、通常年約10%と言われる第4期から人工透析(第5期)への移行率を抑えることを目的とします。
引用:神戸市
とされています。この目的に対し、2018年10月には目標を上回る成果を達成したという中間発表が行われ、投資家には無事に初回の成果連動型支払いが行われています。
世界初の取り組み!「禁煙ソーシャル・インパクトボンドへの投資」
画像引用:豊中市
また2019年11月に愛知県豊中市では、世界初の「禁煙ソーシャル・インパクトボンドへの投資」の実施を発表しました。
第一生命は、豊中市から委託を受けた事業者「株式会社CureApp」に対し、10億円の株式投資を実施し、さらに事業支援として1,200万円の投資も行っています。
企業だけでなく、自治体からも後押しを受けているインパクト投資は、今後さらなる広がりが期待できそうですね!
インパクト投資の拡大を期待するネット上の声
ネット上には、社会貢献度の高いインパクト投資の更なる拡大を期待する声が上がっています。
インパクト投資で15億円調達ってすごい。https://t.co/QTFHifdmGW
— Satoshi AKITA / WASSHA (@Satoshi_Akita) November 17, 2019
売上が三倍・四倍に増えるってすごい…気がします。
メキシコペソは2017年以降安定は安定。が、10%程度の為替リスクは覚悟
社会的インパクト投資レポートvol.6:「メキシコ女性起業家支援ファンド」シリーズ|CROWD CREDIT #note https://t.co/RrTHM3LLEP— ton (@ton960) December 18, 2019
前年比5倍ってすごいな……
金銭的リターンだけでなく、社会や環境へのインパクトを意図した「社会的インパクト投資」の市場規模が日本でも急速に拡大。個人投資家向け商品を開発した野村アセットマネジメントがけん引役、第一生命保険など機関投資家の裾野も広がっているhttps://t.co/mp7QYsTT9M pic.twitter.com/XmGBFwcQQj
— 酒向萌実|GoodMorning (@SAKOMOMI) April 8, 2019
G8社会的インパクト投資シンポジウムに参加。SIBと休眠口座の活用に関するシンポジウム。新たな資本の流れに期待したい。 pic.twitter.com/qwqKLSyv2o
— 片山 尚亮 (@nao_kata) May 30, 2015
7カ所をまわったという貴重な韓国ソーシャルセクターツアーレポート。
ソウル市のようにインパクト投資ファンドを持つ自治体が日本でも出てくることに期待です。
🔽何も知らなかったので直接見に行ってみたらめちゃイケてました:韓国ソーシャルセクターツアーレポートhttps://t.co/VJkx7DLDLl
— 加藤たけし@週2官僚&週3正社員 (@takeshi_kato) December 1, 2019
助成や補助金だけじゃなく、欧米で進んでいるインパクト投資の考え方がもっと広まることに期待するなぁ「酷い…1700億円かけた地方創生事業の成果 地方絶賛より現実的な検証を」https://t.co/1RpX8uFwzO
— サルでもわかる地球平面説 (@_penty_) March 1, 2018
環境問題を解決する方法のひとつとして、水素エネルギーを使った社会の実現があります。
インパクト投資に興味がある方は、こちらの記事もぜひご参考に!
水素エネルギーを使った社会の実現とは?