人間が運転しなくても自動車が走行する自動運転は、段階的ではありますが実用化に向けて開発が進められています。
自動運転を行うために欠かせない要素は、AI(人工知能)そしてディープラーニングです。
今回は自動運転とAI、ディープラーニングの関係についてご紹介します。
- AIが与えられた情報から自らの方針まで決定するのがディープラーニング
- 自動運転の実現には高度な知能を持ったAIが必要
- AIによる自動運転には利点も多いが、解決しなければいけない課題もある
この段階のAIは、人間から与えられた膨大な情報から何を目的に学習するかの方針までAI自身が決めることができます。
人間の運転を必要としない自動運転にもディープラーニングは必要不可欠であり、様々な情報から最適な運転を学習し続けています。
AIによる自動運転は、カメラやセンサーから得られる情報から人間よりも優れた危機察知を行えるなど、事故や交通トラブルを減らす可能性を秘めています。
しかし「トロッコ問題」で語られるような、事故が起きた時に何を犠牲にするのかというような人道的な問題には人間が答えを出さねばならず、将来広がるであろう自動運転の普及に向けた一つの課題となっています。
AIや自動運転を駆使したスマートシティ構想については、別記事にしていますのでご参考まで。
【関連記事】新しいモビリティ社会「MaaS」とは?スマートシティとの関連性もわかりやすく解説
ブロックチェーンと自動運転の関係性についても別記事にまとめています。
ディープラーニングとは?
ディープラーニングは、AIが行える学習のレベルを表す言葉であり、AIがどのように学習するかを示しています。
段階的により深く学習する機械学習
AIの能力にはいくつかの段階があり、一定以上のレベルを超えると、AIは自ら学習ができるようになります。
ただしAIが自ら学習をするためには、人間がAIに対して「何に注目して勉強するか」の条件を事前に与えておかなければなりません。
AIが与えられた条件に従い、データを収集して分析する学習方法を「機械学習」と呼びます。
ディープラーニング(深層学習)は、機械学習をさらに深めた学習方法です。
機械学習ではどんな方針で学習するかを人間が指定する必要がありますが、ディープラーニングでは、AI自身が分析したデータの中から学習方針を構成できるようになります。
- AIは一定のレベルを超えると自ら学習ができるようになる
- 「機械学習」とは与えられた条件を元にAIがデータを収集して分析する学習方法のこと
- 「ディープラーニング」は機械学習をさらに深めた学習方法である
ディープラーニングの成功例
日本国内では、すでに多くの企業がディープラーニングを取り入れており、様々なジャンルで成果を上げています。
みずほ銀行:住宅ローン事前診断サービスを開始!
みずほ銀行は2020年3月23日、AIによる「住宅ローン事前診断サービス」を開始すると発表しました!
インターネットから融資判断に必要な情報を入力すると、最短1分で希望する金額を借りられるか確認できるようになります。
みずほ銀行、AIで住宅ローン事前診断 最速1分 https://t.co/Ig7YDii2dr
— 日経電子版 テクノロジー (@nikkei_tech) March 24, 2020
【住宅ローンニュース】みずほ銀行、最短1分で住宅ローンの借入ができる確率を算出する「AI事前診断」 – MONEYzine / https://t.co/oDE1PrBB0m pic.twitter.com/ien0TUZdus
— 住宅ローンニュース速報 (@jyuutaku_loan) March 25, 2020
このサービスはみずほ銀行に口座がなくても利用できるので、住宅ローンの計画を立てる際に役立ちそうですね!
みずほ証券:株式売買システムの開発・提供
みずほ証券は2016年11月にAIを搭載した株式売買システムを開発し、投資家向けに提供を始めました。
過去の値動きから株価を予測する「テクニカル」を用いた株価の予測を行い、個別銘柄ごとに30分から1時間後に上昇・下落するかを予測しています。
みずほ証券、AIで株売買 機関投資家向けhttps://t.co/BDAWy8DVYI AIは自社開発で、株価変動を予測して「安く買い、高く売る」ように注文執行のタイミングを調整する。機関投資家が受託している年金基金や投資信託の運用成績の下支えにつながる可能性がある
— gorinotsukudani (@gorinotsukudani) October 17, 2016
投資はインベスターしか儲からなくなるかもなぁ。よっぽど勝負感が無いと高速取引には敵わん…インベスターよりインキュベーターの方が楽しそうだからそういう人が増えるかもね。
みずほ証券、AIで株売買 機関投資家向け:日本経済新聞 https://t.co/BakYu4pfkR
— 青きシンボラー (@mincoshi) October 18, 2016
みずほ銀行とソフトバンク:AIスコアレンディング(J.Score)
簡単な質問にこたえることで、AIによる査定を行い低金利の貸付を受けられるサービスであるJ.Scoreをみずほ銀行とソフトバンクで開発しています。
申し込み前に、自身の借り入れ可能額と金利を知ることができるので、計画的な返済プランをたてることができますね。
クエリーアイ:AIが小説を執筆
機械学習と人工知能をつかったマーケティングサービスを提供しているクエリーアイでは、新渡戸稲造の「自警録」を学んだAIに小説を執筆させるという試みを行っています。
「賢人降臨」と題された作品は、一部文法の乱れは発生したようですが、十分鑑賞に耐えられる文章となっているといいます。
200RT 人工知能が書いた書籍「賢人降臨」発売 あえて無校正、「AIの未来感じて」 https://t.co/hbRKaWJPAi
— ITmedia NEWS (@itmedia_news) August 24, 2016
ついに来たわね……
人工知能が書いた小説「賢人降臨」、出版 福沢諭吉と新渡戸稲造の著作をディープラーニング – ねとらぼ https://t.co/JyEF4qhbbO @itm_nlabさんから
— Script少女のべるちゃん@新人広報はじめました! (@novelchan_PR) August 25, 2016
人工知能「零」が書き下ろした書籍「賢人降臨」–NTTドコモのdブックで独占配信 https://t.co/Vccm5jPhjk
— CNET Japan (@cnet_japan) August 25, 2016
AIが小説を執筆できるようになったとは驚きです。
現在はドコモの「dブック」でも配信が停止していますが、どのような内容の小説なのか非常に気になりますね!
自動運転を実現するディープラーニング
AIが独自に学習を行うディープラーニングは、今後実現が見込まれる自動運転にも深く関わっています。
AIのレベルと自動運転の仕組み・関係性
画像引用:チューリッヒ
AIの能力には4つのレベルがあり、どこまで考え行動できるかが定められています。
AIは能力によって4つのレベルに分けられます。
- レベル1:単純制御
- レベル2:単純な人工知能
- レベル3:機械学習
- レベル4:ディープラーニング
レベル1(単純制御)
レベル1は単純制御と呼ばれ、指示をそのまま行う簡単なものです。
ある程度まで冷えたら温度を変える冷蔵庫や、タイマー設定で電源を切るエアコンなどはこれに該当します。
レベル2(単純な人工知能)
レベル2は単純な人工知能であり、ルールを理解してレベル1よりも複雑な行動を行う事が出来ます。
部屋の状況から最適な掃除をするお掃除ロボ、指定した難易度の強さでかんたんな対局を行う将棋ゲームなどが該当します。
ただし指示されたことを行うという点ではレベル1と変わらず、自ら学習することはできません。
レベル3(機械学習)
レベル3は機械学習が出来るようになります。
人間から与えられた一定のルールを持つ大量のデータを処理・分析し、自らパターンを学習していきます。
私たちが普段使う検索エンジンも機械学習を用いたAIにより、様々な入力パターンを学習し、成長しています。
レベル4(ディープラーニング)
レベル4はディープラーニングと呼ばれる、より複雑で深い機械学習が可能となります。
不作為に与えられた膨大なデータから、AI自身が何を目的に学ぶかというルールを作り上げ、それに従った学習を進める事が出来ます。
チェスや囲碁の世界王者にAIが勝利するというニュースがありましたが、これは大量の対局データからAIが戦い方を学習した結果です。
自動運転はレベル3から
自動車が一定のルールに基づき、周囲の環境のデータを収集・分析しながら走行する自動運転は、まさにAIによる学習が必要といえます。
刻一刻と変化する道路状況から最適な走行を判断し続けるには、自ら周囲の情報を収集し学習するレベル3以上のAIが必要といわれています。
自動運転に関する詳しい内容は、下記の記事でわかりやすく解説しています。
【AIによる自動運転が抱える希望と問題点。AIに限界はある?
自動運転は、AIの発達により人間では実現できないような高度な運転が出来る反面、解決しなくてはならない問題にも直面しています。
カメラやセンサーによる検知
自動運転は、カメラやセンサーが周囲の情報を収集し、AIは最適な走行を行います。
カメラで撮影された画像には多くの情報が含まれており、車の陰から伸びる子供の影や周囲に転がるボールから、子供が飛び出してくる可能性を考慮し、不測の事態に備える安全運転に切り替えられます。
人間の目では見落としてしまったり、判断材料にならなかったりする情報も多く存在します。
AIによる分析は、それらの情報も漏らさず収集することができるため、多くの事故を未然に防げると期待されているのです。
トヨタでは、AIによる自動運転で交通事故をなくしたいと考えています。
ひびきの電子株式会社では、ドライバーの体調の変化をいち早く察知して事故を防ぐシステムを開発しています。
「トロッコ問題」の壁
一方で、AIによって自動運転する車が事故を起こしてしまう際「何を犠牲にするのか」を考えることは、思考実験の古典として有名な「トロッコ問題」の再燃につながっています。
「トロッコ問題」とは?
進行するトロッコの先には5人の人間がおり、その5人を避けてポイントを切り替えるとその先には1人の人がいるという問題。
この「Aを犠牲にすればBは助かる」というシチュエーションは、1960年代に論争が生まれて以降多くの議論をもたらしました。
AとBに何を当てはめるか、人によって選び方が違ったりするため、正解や間違いという事では議論が着地していません。
自動運転の車が危険な状況に陥った際、どの選択肢をとっても誰かが犠牲になってしまう状況に陥ることもあるでしょう。
もちろんその状況に陥らないように最善は尽くされますが、その上で誰に犠牲を強いるのかを決めなければなりません。
万人が納得する答えが出ることはないでしょうが、AIにどんな行動を取らせるか、いずれ人間が一定の答えを出さなければならないのです。
トロッコ問題は、「自動運転車が事故を免れない状況に置かれた時、搭乗者と他の人命、どちらを優先的に守るようプログラムすべきか」と読み替えると、わりかし喫緊な問題に関係してきている。そして「どうプログラミングされたクルマを買いたいか」という問いが我々に突きつけられる日はそう遠くない。
— 三崎律日@「奇書の世界史」発売中 (@i_kaseki) September 29, 2019
サンデル先生の白熱教室でも話題になったトロッコ問題が自動運転車で現実に。ううむ。/「通行人を助けるため運転者を犠牲にするのか?」全自動運転カーは人の命に関わる道徳的ジレンマにどう対応するのか? https://t.co/12VylInibY
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) October 27, 2015
自動運転の「トロッコ問題」「通行人を助けるため運転者を犠牲にするのか?」という問題について、考えています。 #spcamp #seccamp pic.twitter.com/J6YvI9QI9f
— セキュリティ・キャンプ (@security_camp) November 5, 2016
自動運転技術が進歩する中で、問題とされている「トロッコ問題」。トロッコ問題は、国(環境)によって変わるという。最近は「自動運転技術」じゃなくて「運転支援技術」と言い換えたり、自動運転はまだ先かな。/自動運転車は誰を救うべきか「究極の選択」国民性に違い https://t.co/6Z2FloGWje pic.twitter.com/b9K8GEePFQ
— らるごどらいぶ@愛妻家&愛犬家 (@largo_drive) November 7, 2018
自動運転に対する未来への展望例(オリンピックでの採用)
自動運転は日々進化をとげ、実用化に向けて開発が進められています。
コロナによる影響で延期が決定してしまいましたが、トヨタは東京オリンピックに自動運転車「e- Palette」を提供すると発表しています。
e- Paletteのイメージ動画↓
また、さまざまな自動車メーカーが自動運転が搭載された車を発表しています。
先日、Audiがフランクフルトモーターショーで発表したコンセプトカー《#Audi Aicon》。このクルマにはステアリングもペダルも存在しません。どのような状況でもドライバーの操作を全く必要としない《完全な自動運転》を実現する未来のクルマなのです。 pic.twitter.com/Y25jyaCiX3
— Audi Japan/アウディジャパン (@AudiJapan) September 26, 2017
アウディA8新型初公開!市販車で世界初の「レベル3」自動運転を実現https://t.co/KkxLtEFVLi#a8 #アウディ #アウディサミット pic.twitter.com/GEXOf2rNhX
— レスポンス (@responsejp) July 21, 2017
車に乗る人だけでなく、車に乗らない人も安心して過ごせる自動運転車の実現が待ち遠しいですね!
各メーカーの自動運転に関する詳しい情報はこちらの記事をどうぞ!