水素燃料電池自動車

水素・燃料電池自動車は爆発が心配・・本当に大丈夫?

水素・燃料電池自動車は爆発するのか

クリーンで供給されやすい夢のエネルギーとして期待されている水素ですが、一方で可燃性のガスであることから爆発事故などにつながる危険性が心配されています。

水素で走る水素自動車や燃料電池自動車には危険性はないのでしょうか?

この記事でわかること
  1. 燃料電池車自動車は爆発するのか
  2. 世界で起きた水素事故(ノルウェーの事例)
  3. 今後の水素ステーション数の推移
結論

水素で走行する燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」は、時速80kmで追突されても爆発しない強度を持つ水素タンクを採用しています。

衝撃だけでなく、車両火災の際にも水素が爆発しないように様々な対策が取られており、燃料電池自動車の水素が爆発する危険性は極めて低いといえるでしょう。

しかし世界では大きな水素事故が2件発生しており、扱い方によっては水素は危険な事故につながることもあります。

日本では水素エネルギーの活用を促進しており、地方自治体の中にも積極的な水素社会の構築を進めているところもあります。
経済産業省も水素ステーション建造の規制緩和を行い、水素社会の実現の加速を目指しています。

爆発の危険性はあるの?

可燃性ガスの一種である水素をエネルギーとしている燃料電池自動車は、万が一の爆発に対して非常に強力な対策を取っています。

時速80kmで追突されても壊れない水素タンク

トヨタ ミライ mirai画像引用:トヨタ公式サイト

トヨタが開発した燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」は、時速80kmで後ろから追突される後突実験を行っていますが、水素の引火の危険性は無いことを実証しました

ミライの水素タンクは非常に軽く拡散しやすい水素を抑え込むため、最大700気圧にも達するほどの高圧をかけ続けています。

さらにミライの水素タンクは、その2.25倍の圧力をかけても問題がないように作られおり、何万回ものサイクル実験にも合格しています。

これほどの強度を誇るタンクは、たとえ車体がつぶれてしまうほどの衝撃を受けても壊れない設計・強度となっているため、事故の衝撃による爆発は起こらないといえるでしょう。

車両火災時に水素を強制排出する溶栓弁

衝撃には強くても、車体が燃えてしまった場合はどうでしょうか。
ミライはそのような車両火災に対しても対策をしています。

ミライの水素タンクには「溶栓弁」という、熱で溶けるバルブが採用されています。車両火災になった際にはこのバルブが熱で溶け、タンク内の水素を社外に排出します。

このバルブは火が中に入り込まない逆止弁式となっており、タンクの中の水素に引火させず、一方的に外に向け水素を排出します。

この排出中の水素に引火してしまったとしても、火炎放射器のように水素が燃えながら噴出され、タンクの中の水素が一度に爆発することを防ぎます。

衝撃を検知すると自動でしまるバルブ

トヨタ ミライ mirai画像引用:トヨタ公式サイト

またミライには水素漏れを検知する「センサー」が搭載されています。
水素がどこかから漏れていることを検知した場合、即座にバルブが閉まり水素をタンク内に閉じ込めます。

高圧に耐えられ、衝撃にも強いタンク内に水素を抑え込むことで、外への水素流出を防ぎ、水素の燃焼を防ぐのです。

万が一止まらない場合は濃度が高くならないように拡散

しかし、万が一バルブの機能が働かず水素の流出が止まらない場合には、大気中の水素の割合が高くならないように拡散するような仕組みも搭載されています。

水素はどんな状態でも必ず燃えるわけではなく、大気中の水素濃度が4%~75%の間になると可燃性となります。

そのため水素の濃度が高くならないように素早く拡散させることで、4%まで濃度を上げないようにしているのです。

ミライの水素タンクは、事故によるパイプ破損などで水素が漏れた場合は封じ込め、封じ込められない場合は素早く拡散される仕組みになっています。

また、車両火災の際には水素を勢いよく車外に開放することで、爆発による大事故を防ぐように設計されています。

水素ステーションの事故とは?

燃料電池自動車であるミライは水素に引火しないよう、細心の注意が払われています。

しかし水素が可燃性を帯びた危険なガスであることには変わりなく、実際に事故が発生したこともあります。

ノルウェーの水素ステーションで爆発事故

水素ステーション画像引用:electrek

2019年6月10日、ノルウェーの首都・オスロ郊外のバーハムにある水素ステーションで爆発事故が発生しています。

高圧貯蔵タンクの栓の設計に問題があるとされたこの事故では死者は出ませんでしたが、付近を走行していた車のエアバッグが作動するほど、周囲に強い衝撃が発生しています

この事故を受け、トヨタと韓国の現代自動車(ヒュンダイ)は、ノルウェーにおける燃料電池自動車の販売を一時的に停止しています。

『非常に驚いた』

『警察はバイエルムの水素ステーションでの新たな爆発を恐れている』

韓国の江原道江陵で工場の水素タンクが爆発

2019年5月23日、韓国の江原道江陵市(カンウォンド・カンヌンシ)にある江陵ベンチャー工場で、水素タンクの爆発事故が発生しています。

水素タンク内の酸素濃度が高まっている警告を無視してテストを続けた結果、静電気火花などにより引火したものと見られています。

この事故では火災は発生しなかったものの、10km離れた地点にも音が聞こえるほどの爆発音が発生し、100m離れた別の建物の窓ガラスが割れるほどの衝撃が発生したといいます。

『今日江陵水素爆発現場安全診断が実施されました。爆発の衝撃で近くの他の施設まで大きな被害を受けたことが確認された。』

『江陵水素タンク爆発…管理不良が原因』

『8人の死傷者が発生した江原テクノパーク江陵ベンチャー工場の水素タンクの爆発事故は、爆発範囲を超える酸素がタンクに流入された状態で、静電気の摩擦による火花が起こり発生した高精度の鑑定結果が出ました』

『江陵水素タンク爆発、水素経済への影響は大きい』

水素ステーションは増える?

日本は現在、水素エネルギーの拡大に向け力を入れています。

しかし、一般層にアピールしやすい燃料電池自動車の普及は進んでいるとは言い難く、その原因の一つに水素ステーションの数が挙げられています。

現在全国に112か所

トヨタ ミライ mirai画像引用:東洋経済オンライン

燃料電池自動車に水素を補給する水素ステーションは、2019年12月末の時点で全国に112か所設置されています。

ガソリン車に給油するガソリンスタンドは、全国に3万か所存在しています。

電気自動車に電気を補充する充電スタンドも実用的な高速充電器だけでも7,600台が設置されているのと比較すると、水素ステーションの数は非常に少なく、航続距離が長い燃料電池自動車でも使い勝手がいいとは言えません。

1施設4~5億円と費用が高額

水素ステーションの数が増えない利用に一つに、施設の建造費用が高額であるという点が挙げられます。

水素ステーションの建造には、およそ4~5億円の費用が必要とされています。
これはガソリンスタンドの建造費用1~2億円にくらべ2倍以上となるため、気軽に建造できないことに繋がります。

徳島県は移動型の水素ステーションでPR

水素ステーション画像引用:県政だよりアワー徳島

そんな中、徳島県では水素エネルギー社会への積極的な取り組みとして「徳島県水素グリッド構想」を策定し、水素エネルギーの積極的な活用に乗り出しています。

移動型水素ステーションの稼働を開始し、民間へのPRを強化しています。
さらに公用車に燃料電池自動車を採用し、徳島阿波おどり空港には水素ステーションを建造、空港内の貨物運送用フォークリフトに燃料電池車を導入しています。

徳島県水素グリッドフォーラム↓

経産省が水素ステーション設置の規制緩和、2025年度までに320か所まで増加

日本は水素エネルギー活用の先進国を目指しており、経済産業省ではそのために様々な取り組みを行っています。

現在水素ステーションの建造には多くの規制が関係していますが、日本全国に水素ステーションを建造できるよう、これらの規制を徐々に緩和しています。

これにより、2019年12月時点で112か所の水素ステーションを、2020年度中に160か所2025年度には320か所にまで増加という目標を掲げています。

これら水素ステーションの広がりに課題があり、なかなか燃料電池自動車の利用が浸透していかないと言われています。
別記事にしてまとめています。

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