水素燃料電池自動車

水素で走る燃料電池自動車のメリット・デメリット・評判まとめ

水素燃料電池自動車とガソリン自動車の比較

水素をエネルギー源として走行する燃料電池自動車は、環境への配慮に優れた車として注目を集めています。

燃料電池自動車は、従来のガソリン車に比べどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

水のイメージ
この記事でわかること
  1. 燃料電池自動車のメリット
  2. 燃料電池自動車のデメリット
  3. 燃料電池自動車とガソリン車の違い
燃料電池自動車のメリット・デメリットは?サマリー

燃料電池自動車は走行中に二酸化炭素を発生させず、騒音を発生しない静かな走行ができるため、ガソリン車に比べクリーンで環境にやさしい面を持っています。

しかし燃料となる水素の生成段階で二酸化炭素が排出されてしまう問題が指摘されており、また若い技術が使用されていることから車両の価格が非常に高いため、国の後押しはありながらも十分に普及しているとは言えません。

また水素を補給する水素ステーションの数は全国で112か所と非常に少ないことも、普及を妨げている大きな要因となっており、経済産業省は今後水素ステーション増加に力を入れていくことを発表しています。

燃料電池自動車と水素自動車や電池自動車との違いは、こちらの記事で詳しくまとめています。

【関連記事】燃料電池自動車と水素自動車の違いとは?普及しない理由も解説

【関連記事】燃料電池自動車と電気自動車の違いとは?

燃料電池自動車のメリット

水素を使い走行する燃料電池自動車には、どんなメリットがあるのでしょうか。

走行中の二酸化炭素・有害ガスの排出無し

トヨタ ミライ mirai画像引用:トヨタ公式サイト

トヨタのMIRAIなどの燃料電池自動車は、車内に蓄えられた水素と酸素を化学反応させることにより発生する電気を使い、モーターを回転させ走行します。

水素と酸素の化学反応により排出されるものは水だけであるため、走行中に二酸化炭素や一酸化窒素といった有害ガスを発生させることはありません

エネルギー効率が高く、長距離移動も可能

道路燃料電池自動車は現時点において、ガソリンを使った内燃機関のエネルギー効率(15~20%)に対し、燃料電池は高いエネルギー効率(30%以上)を発揮しています。

そのため少量のエネルギーでも長距離を走行することができ、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」では、最大650kmの走行距離を実現しています。

ガソリン車に比べ音が静か

ガソリン車の動力は内燃機関であるエンジンであり、エンジン内でガソリンを爆発させたエネルギーで自動車を走行させます。

その爆発の際には少なからず音を発生させるため、車の構造や排気量によっては大きな騒音となってしまうこともあります。

燃料電池自動車は内燃機関を持たず、水素と酸素を化学反応させた際に生まれる電力でモーターを回すため、エンジンのような騒音は発生しません

運転中の車内はもちろん、夜間や静かな地域での運転でも周囲に騒音をまき散らす心配はないでしょう。

ミライについては別記事にまとめています↓

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燃料電池自動車のデメリット

ガソリン車に無いメリットを持つ燃料電池自動車ですが、反対にデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

水素ステーションの数が少ない

水素ステーション画像引用:川崎市

燃料電池自動車の燃料にあたる液体水素は、水素ステーションで補充することができます。

水素ステーションは2019年12月時点において、全国で112か所のみ運用されています。

県内に1か所も水素ステーションがない地域もあるため、向かう先によっては水素補充ができないこともあります。

まだまだ普及には課題が多そうです。
特に都心部以外の地域への配備が望まれますね。

車両価格が高い

ホンダ クラリティ画像引用:ホンダ公式サイト

現在日本国内で販売されている燃料電池自動車はトヨタの「MIRAI(ミライ)」と、ホンダの「クラリティ」の2車種のみです。

クラリティは一般販売はしておらず、リース販売のみです。

これらの車両価格はどちらも非常に高額であり、ミライは741万円(税込)、クラリティは784万円(税込)と、高級セダンを大きく上回る価格設定となっています。

車種 車両価格(税込)
MIRAI(ミライ) 741万円
クラリティ 784万円
トヨタ クラウン(特別仕様車) 507~551万円

 

水素の製造過程で二酸化炭素は排出される

工場のイメージ走行中には二酸化炭素を発生させない燃料電池自動車ですが、エネルギー源となる水素を生成する際に二酸化炭素を発生させてしまう点が指摘されています

水素は石油や天然ガスなどの化石燃料から生成される他、製鉄所や化学工場での製造プロセスの中で副産物として生まれます。

このどちらの生成方法も、水素が生まれる過程で二酸化炭素を排出してしまうため、水素は「完全に環境にやさしいエネルギーとは言えないではないか!」という意見が出ているのです。

風力発電太陽光や風力といった、再生可能エネルギーから生まれた「電気による水の電気分解」、またはメタンガスなどのガスを改質する「バイオマスからの生成」といった、二酸化炭素を排出しない技術も存在しています。

今後は水素生成の方法が代替されていくことが期待されています。

このあたりのデメリットからなかなか燃料電池自動車が普及していかないと言われています。

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燃料電池車とガソリン車の比較

燃料電池自動車・ガソリン車ともに、どちらもメリット・デメリットを抱えています。

項目 燃料電池車 ガソリン車
有毒ガスを排出しない ×
走行時の騒音が抑えられている ×
燃料補給の時間・効率がよい

改めて両方の車を比較してみましょう。

有害ガスの排出比較

有毒ガス燃料電池自動車は水素から生まれた電力によりモーターを回し走行するため、走行中に二酸化炭素や一酸化窒素といった有害ガスを発生しません

ガソリン車はガソリンを燃焼させる時点でそれらを少なからず発生させるため、環境に対する悪影響はガソリン車の方が大きいといえます。

しかし、燃料電池自動車に必要な水素は、生成方法によっては二酸化炭素を排出してしまうため二酸化炭素を排出しない水素生成技術の成長が待たれます

走行時の騒音

トヨタ ミライ miraiガソリン車はエンジン内でガソリンを燃やして動力を得ています。

ガソリンを燃焼させる際にはエンジン音と呼ばれる大きな音が発生し、また排気ガスを排出するマフラーによっては騒音になるような大きな音を響かせてしまいます。

燃料電池自動車にはエンジン自体がなく、モーターで自動車を走らせるためガソリンエンジンに比べるとかなり小さな音しか出しません。

排気の必要がないためマフラーも存在しておらず、騒音の心配はないといえるでしょう。

燃料補給の時間・効率

ガソリン車が給油する際、ほぼ空の状態からでも2~3分で満タンまで給油できます。

燃料電池自動車は水素ステーションで液体水素を補充しますが、こちらも満タンまで2~3分と、燃料の補給時間は差がありません。

しかし2020年現在においては、補給できる場所の数には大きな差があります

ガソリン車がガソリンを補給するガソリンスタンドは全国に約3万か所存在し、全国に満遍なく散らばっています。

ガソリン補給のイメージ水素ステーションは2019年12月の時点で112か所しか存在せず、1か所もない県もあります。

経済産業省は2025年までに160か所、2050年までに320か所まで増やすと宣言していますが、いつでもどこでも水素を補充できるという状態になるには長い年月が必要なのは間違いありません

日本は国を挙げて水素エネルギーの普及に力を入れていますが、水素ステーションの数が、水素エネルギーの入り口ともいえる燃料電池自動車普及の大きな壁となっているのです。

普及への課題が多い燃料電池自動車ですが、すでに日常の一部として取り入れられている地域もあります。

次世代エネルギーを使用した燃料電池自動車が日本中に普及する日が待ち遠しいですね!

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