水素をエネルギー源として走行する燃料電池自動車は、環境への配慮に優れた車として注目を集めています。
燃料電池自動車は、従来のガソリン車に比べどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
- 燃料電池自動車のメリット
- 燃料電池自動車のデメリット
- 燃料電池自動車とガソリン車の違い
燃料電池自動車は走行中に二酸化炭素を発生させず、騒音を発生しない静かな走行ができるため、ガソリン車に比べクリーンで環境にやさしい面を持っています。
しかし燃料となる水素の生成段階で二酸化炭素が排出されてしまう問題が指摘されており、また若い技術が使用されていることから車両の価格が非常に高いため、国の後押しはありながらも十分に普及しているとは言えません。
また水素を補給する水素ステーションの数は全国で112か所と非常に少ないことも、普及を妨げている大きな要因となっており、経済産業省は今後水素ステーション増加に力を入れていくことを発表しています。
燃料電池自動車のメリット
水素を使い走行する燃料電池自動車には、どんなメリットがあるのでしょうか。
走行中の二酸化炭素・有害ガスの排出無し
画像引用:トヨタ公式サイト
トヨタのMIRAIなどの燃料電池自動車は、車内に蓄えられた水素と酸素を化学反応させることにより発生する電気を使い、モーターを回転させ走行します。
水素と酸素の化学反応により排出されるものは水だけであるため、走行中に二酸化炭素や一酸化窒素といった有害ガスを発生させることはありません。
エネルギー効率が高く、長距離移動も可能
燃料電池自動車は現時点において、ガソリンを使った内燃機関のエネルギー効率(15~20%)に対し、燃料電池は高いエネルギー効率(30%以上)を発揮しています。
そのため少量のエネルギーでも長距離を走行することができ、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」では、最大650kmの走行距離を実現しています。
ガソリン車に比べ音が静か
ガソリン車の動力は内燃機関であるエンジンであり、エンジン内でガソリンを爆発させたエネルギーで自動車を走行させます。
その爆発の際には少なからず音を発生させるため、車の構造や排気量によっては大きな騒音となってしまうこともあります。
燃料電池自動車は内燃機関を持たず、水素と酸素を化学反応させた際に生まれる電力でモーターを回すため、エンジンのような騒音は発生しません。
運転中の車内はもちろん、夜間や静かな地域での運転でも周囲に騒音をまき散らす心配はないでしょう。
トヨタの燃料電池自動車「ミライ」を運転してみました。快適です。静かだし、加速も素晴らしい。3分ほどの水素充填で650㌔走る。市販価格700万円。補助金200万円。量産に入れば価格は下がる。EV、ガソリン車とどんなバランスになるのか。 pic.twitter.com/1RQIu70E8D
— あいさわ一郎 (@ichiroaisawa) June 25, 2015
ミライってスゲー❗
スムーズ、静か、速い、環境に優しい…、
もう少し安くならんかな☺ pic.twitter.com/as8y1IqcQw— そらまめ (@soramametakesh1) July 10, 2016
fan toドライブのCMの、
ミライって水素のくるま静かで、エンジン音しない
まえ、イベントで乗った(=^^=)
— 🦀maiko c-3A140 (@4H64AO19giE71yV) January 14, 2020
ミライについては別記事にまとめています↓
燃料電池自動車のデメリット
ガソリン車に無いメリットを持つ燃料電池自動車ですが、反対にデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
水素ステーションの数が少ない
画像引用:川崎市
燃料電池自動車の燃料にあたる液体水素は、水素ステーションで補充することができます。
水素ステーションは2019年12月時点において、全国で112か所のみ運用されています。
県内に1か所も水素ステーションがない地域もあるため、向かう先によっては水素補充ができないこともあります。
車に水素入れようと近辺の水素ステーション見てるけど、定休日がやたら多いとか、狙ったように臨時休業とかばっかだな
こんなだから水素自動車普及しないんだろうが、トヨタもやる気無いならもう生産中止しちまえよ— ネス大佐@指揮官営業中 (@ness_kommodore) March 5, 2020
燃料が水素ガスの車がガス欠しそうなので車載に積んで都内から千葉県まで水素ステーションなる所を探して行ったんだけど…
いや不便過ぎるやろヾノ・ω・`)イヤイヤ
水素しかないみたいだけど、一般の利用者来るんかね(´・ω・`;)? pic.twitter.com/qSgkYBvbzX
— やにくい (@ore_yh) March 31, 2020
トヨタ ミライの唐草模様の車両がテストしているのか。400万くらいなら考えるけどなあ。ただ都内の水素ステーションあまりないんだよな
— MORIZO (@PrototypeLM) April 1, 2020
トヨタのMIRAI初めて走ってるの見たけど、水素ステーションって宮城県内たった1か所しかない。
— シゲポソ (@shigeponyo) March 16, 2020
まだまだ普及には課題が多そうです。
特に都心部以外の地域への配備が望まれますね。
車両価格が高い
画像引用:ホンダ公式サイト
現在日本国内で販売されている燃料電池自動車はトヨタの「MIRAI(ミライ)」と、ホンダの「クラリティ」の2車種のみです。
クラリティは一般販売はしておらず、リース販売のみです。
これらの車両価格はどちらも非常に高額であり、ミライは741万円(税込)、クラリティは784万円(税込)と、高級セダンを大きく上回る価格設定となっています。
車種 | 車両価格(税込) |
MIRAI(ミライ) | 741万円 |
クラリティ | 784万円 |
トヨタ クラウン(特別仕様車) | 507~551万円 |
水素の製造過程で二酸化炭素は排出される
走行中には二酸化炭素を発生させない燃料電池自動車ですが、エネルギー源となる水素を生成する際に二酸化炭素を発生させてしまう点が指摘されています。
水素は石油や天然ガスなどの化石燃料から生成される他、製鉄所や化学工場での製造プロセスの中で副産物として生まれます。
このどちらの生成方法も、水素が生まれる過程で二酸化炭素を排出してしまうため、水素は「完全に環境にやさしいエネルギーとは言えないではないか!」という意見が出ているのです。
太陽光や風力といった、再生可能エネルギーから生まれた「電気による水の電気分解」、またはメタンガスなどのガスを改質する「バイオマスからの生成」といった、二酸化炭素を排出しない技術も存在しています。
今後は水素生成の方法が代替されていくことが期待されています。
このあたりのデメリットからなかなか燃料電池自動車が普及していかないと言われています。
燃料電池車とガソリン車の比較
燃料電池自動車・ガソリン車ともに、どちらもメリット・デメリットを抱えています。
項目 | 燃料電池車 | ガソリン車 |
有毒ガスを排出しない | △ | × |
走行時の騒音が抑えられている | ◎ | × |
燃料補給の時間・効率がよい | ○ | ◎ |
改めて両方の車を比較してみましょう。
有害ガスの排出比較
燃料電池自動車は水素から生まれた電力によりモーターを回し走行するため、走行中に二酸化炭素や一酸化窒素といった有害ガスを発生しません。
ガソリン車はガソリンを燃焼させる時点でそれらを少なからず発生させるため、環境に対する悪影響はガソリン車の方が大きいといえます。
しかし、燃料電池自動車に必要な水素は、生成方法によっては二酸化炭素を排出してしまうため二酸化炭素を排出しない水素生成技術の成長が待たれます。
走行時の騒音
ガソリン車はエンジン内でガソリンを燃やして動力を得ています。
ガソリンを燃焼させる際にはエンジン音と呼ばれる大きな音が発生し、また排気ガスを排出するマフラーによっては騒音になるような大きな音を響かせてしまいます。
燃料電池自動車にはエンジン自体がなく、モーターで自動車を走らせるためガソリンエンジンに比べるとかなり小さな音しか出しません。
排気の必要がないためマフラーも存在しておらず、騒音の心配はないといえるでしょう。
燃料補給の時間・効率
ガソリン車が給油する際、ほぼ空の状態からでも2~3分で満タンまで給油できます。
燃料電池自動車は水素ステーションで液体水素を補充しますが、こちらも満タンまで2~3分と、燃料の補給時間は差がありません。
しかし2020年現在においては、補給できる場所の数には大きな差があります。
ガソリン車がガソリンを補給するガソリンスタンドは全国に約3万か所存在し、全国に満遍なく散らばっています。
水素ステーションは2019年12月の時点で112か所しか存在せず、1か所もない県もあります。
経済産業省は2025年までに160か所、2050年までに320か所まで増やすと宣言していますが、いつでもどこでも水素を補充できるという状態になるには長い年月が必要なのは間違いありません。
日本は国を挙げて水素エネルギーの普及に力を入れていますが、水素ステーションの数が、水素エネルギーの入り口ともいえる燃料電池自動車普及の大きな壁となっているのです。
普及への課題が多い燃料電池自動車ですが、すでに日常の一部として取り入れられている地域もあります。
水素なんて・・・と言う人がいるが勝どきではすっかり日常~!🙂
近くに水素ステーションもあるのでMIRAIもよく見かけます
勝どき橋を渡るSORAが静かで力強い!結構登りで昔は黒煙だらけでした PM2.5以下のフィルターを通した酸素と化学反応→発電=周りの空気よりキレイ!
・・・やっぱり1台ほちい💕 pic.twitter.com/2zFMtsfXZH— Banji Banji (@BanjiBanji4) March 27, 2020
水素ステーションに行ったらバスが給油?それとも充電?っていうのかな?
とにかく未来が来たなぁ と思った。 pic.twitter.com/Ww3Uub96Dq— 千葉パト隊 (@CHIBA_pat_tokyo) March 26, 2020
水素燃料バスかっこよー pic.twitter.com/aoRlj4crF0
— macha(まちゃ) (@macha_aa) April 4, 2020
所沢市にて。#水素ステーション 新しい時代が来てるわ。 pic.twitter.com/Ymk4O9ME6D
— るぱん (@PckYDKwps6Yyrlz) April 5, 2020
ミライ給水しに行ったらイワタニ芝公園水素ステーションに新型ミライあった。カッコイイけどデカ! pic.twitter.com/EnM1KhjHFF
— たじお@毒蛇乗り (@Tajio_vipersrt) April 3, 2020
堺市初となる水素ステーションが美原にオープンしました。これに合わせ、環境局にあった燃料電池車MIRAIを美原区役所に配置しました。使用時に全くCO2を排出しない究極の環境車。これに加えて、非常時の電源供給車としての機能も。地域の防災避難訓練などに活用します。 pic.twitter.com/PJGrEEL4Pm
— 堺市美原区長 (@miharakucho) April 2, 2020
次世代エネルギーを使用した燃料電池自動車が日本中に普及する日が待ち遠しいですね!