二酸化炭素を発生させず、環境にやさしい自動車として燃料電池自動車が注目を集めています。
同じようにエコに配慮した自動車に電気自動車がありますが、これらはどのような違いがあるのでしょうか。
- 水素と酸素を化学反応させて発電し、その電力で走るのが燃料電池自動車
- 充電された電気をエネルギー源とするのが電気自動車
- 海外における燃料電池自動車の動き
燃料電池自動車・電気自動車ともに電気でモーターを動かす車です。
燃料電池自動車は車内で水素を使い発電するのに対し、電気自動車は電気を充電したバッテリーから電力を供給します。
燃料電池自動車は現状では水素の補給に課題を抱え普及が進んでいませんが、電気自動車もまた充電時間が長いという問題点を抱えています。
その中でアメリカは技術力を高め航続距離を延ばし、またフォークリフトの分野の強化を進めています。
燃料電池自動車とは?
燃料電池自動車とは、どのような仕組みで動く自動車なのでしょうか。
水素と酸素を化学反応させて発電
画像引用:トヨタ公式サイト
燃料電池自動車はFCV(Fuel Cell Vehicle)といい、燃料電池をエネルギー源として走行する自動車です。
燃料電池とは?
燃料電池(ねんりょうでんち、英: fuel cell)は、電気化学反応によって燃料の化学エネルギーから電力を取り出す(=発電する)電池を指す。燃料には方式によって、水素、炭化水素、アルコールなどを用いる。
引用:Wikipedia
燃料電池自動車は、車内の燃料電池に充電された電力によりモーターが回転し、その動力で走行する仕組みとなっています。
燃料電池自動車の仕組み
水素ステーションは全国で112か所
画像引用:日本経済新聞
燃料電池自動車を動かすためには、水素ステーションで補充する液体水素が必要です。
水素ステーションは2019年12月現在、全国に112か所で運用されています。
ガソリンスタンドや充電スタンドに比べるとその数は少数であり、いつでもどこでも水素を補充できるとは言い難い状態です。
その現状に対し、経済産業省は今後水素ステーション数の増加を計画しており、2025年には320か所まで増やす見込みとなっています。
燃料電池自動車の普及率は0.1%
2018年の新車乗用者販売台数は約439万台でしたが、その内燃料電池自動車は612台と、普及率としては0.1%に留まっています。
普及率が伸び悩む理由は、先に触れた水素ステーションの数だけでなく、高額な車体価格、水素に対する危険なイメージなどいくつかの理由が挙げられます。
電気自動車とは?
燃料電池自動車よりも一足先に登場し、エコカーの代表格ともいえる電気自動車はどのような仕組みの車なのでしょうか。
充電された電気がエネルギー源
画像引用:日産公式サイト
電気自動車は車内のバッテリーに充電された電気をエネルギー源とし、モーターを動力源として走行する自動車です。
電気で動くモーターが動力源なのは燃料電池自動車と共通しています。
しかし、燃料電池自動車が水素を使い車内で発電するのに対し、電気自動車は直接充電された電気を使い、モーターを稼働させる違いがあります。
充電スポットはガソリンスタンドと変わらない全国3万か所
画像引用:東洋経済オンライン
電気自動車に電気を充電する充電スポット数は年々増加し、2018年12月には全国で約3万台が設置されています。
2018年12月の時点では、ガソリンスタンドの数も同じく約3万か所となっており、この数から充電スポットは十分な普及を見せていることがうかがえます。
ただし電気自動車の充電は、ガソリン車と比べ非常に時間がかかります。
普通充電器では約4時間で80km、7時間で160km走行できるだけの充電が可能なため、充電が切れかかってからでは十分な量の充電が行えないこともあります。
全国にある3万台のうち、約7,600台は急速充電が可能な急速充電器となっています。
急速充電器は約15分で80km、30分で160kmと10倍以上のスピードで充電が可能ですが、設置されている場所は高速道路のサービスエリアなどに限られています。
充電器の種類 | 走行距離(80km) | 走行距離(160km) |
普通充電器 | 約4時間 | 約7時間 |
急速充電器 | 約15分 | 約30分 |
電気+プラグインハイブリッドで約1.1%のシェア
2018年の新車乗用車販売台数実績では、電気自動車が約2.7万台の0.6%、外部からの充電を可能としたプラグインハイブリッド車が約2.3万台の0.53%と、合計で約1.1%のシェアを持っています。
電気自動車は燃料電池自動車より普及が進んでいます。
しかしガソリン車の給油に比べて充電が不便であること、車両の購入価格がまだまだ高いことから、電気自動車の普及も思うように進んでいないのが現状です。
海外の燃料電池車事情とは
日本ではトヨタ・ホンダが力を入れている燃料電池自動車ですが、海外ではどのような動きがあるのでしょうか。
中国では都市バスに採用、2020年に1万台を目標
画像引用:日本経済新聞
中国は燃料電池自動車を活用する国の1つであり、商用車分野では世界トップを走っています。
2019年7月には、燃料電池発電機を搭載した路線バス20台が四川省成都市を走り始め、8月には山東省濰坊市(いほうし)でも大量の燃料電池バスが操業開始されました。
また中国で発表された「中国水素エネルギー産業インフラ発展青書2016」では、中国における燃料電池自動車は2020年には1万台、2030年には200万台に達し、中国の自動車生産量の5%に達するという予想を見せています。
こちら水素バスのSORA。
呉市主催で実験運行。運転士さんは中国JRバスでした。 pic.twitter.com/sFocLnaXZP— @Asakaze_Minami (@Asakaze_Minami) November 30, 2019
北汽福田汽車が新型の燃料電池バス(FCバス)を展示。全長8.5m、水素タンクを5本搭載し、10分間の水素の充塡で500kmの走行が可能。 #中国 pic.twitter.com/w9jffV5mwK
— China Tips by myokoi (@myokoi1962) April 23, 2017
国家電力投資集団と中国中車が共同開発した水素燃料電池路線バスが寧波市でラインオフ。水素燃料電池路線バスの全長は12m、水素注入時間は15分、満タン時の航続距離は600km以上。エネルギー変換効率は53−55%で、一般的な内燃機関の3倍。 #中国 pic.twitter.com/RoRMpmDHtm
— China Tips by myokoi (@myokoi1962) January 11, 2020
韓国が2019年の世界販売台数1位
画像引用:東洋経済オンライン
韓国は個人向けの燃料電池自動車の分野で飛躍をみせています。
2019年の1~10月における世界の燃料電池自動車の販売数のうち、半数を韓国の自動車メーカーである現代自動車(ヒュンダイ)が占めています。
アメリカが航続距離1,200kmのFCVトラックを開発
技術革新が著しいのがアメリカであり、トラック分野での躍進が目立っています。
アメリカのトラックメーカーであるNikolaは、航続距離が1,200kmにおよぶ長距離運行FCVトラックを開発しました。2020年にノルウェーでの走行テストを実施予定です。
またFCフォークリフトの分野では、Amazonのニューヨーク州集配センターへの導入が決定し、施設外に大容量の液体水素を貯蔵する装置の設置も行われます。
『ニコラ、1,200マイルの航続距離を持つ水素燃料電池トラックを公開』
Nikola reveals hydrogen fuel cell truck with range of 1,200 miles https://t.co/iZuXbWGzNo by @Tom_Mendelsohn pic.twitter.com/Q6eG1S11fA
— Ars Technica UK (@ArsTechnicaUK) December 5, 2016
『ニコラセミ水素燃料電池のパワーは2,000馬力!』
2,000-hp Nikola semi fuel cell hydrogen power!https://t.co/NFPmw8Eyps#cdnpoli @Twitter @Tedcruz @mcuban pic.twitter.com/JKERmtG3P9
— Bergg69 (@Bergg69) September 2, 2016
『ニコラ電気トラックが米国、カナダ市場向けの水素燃料電池を取得』
Nikola electric truck getting hydrogen fuel cell for US, Canadian market #climate #hydrogenhttps://t.co/cPGIxKIcuO pic.twitter.com/mOcauYtq4A
— Fred Bentler (@Bentler) September 2, 2016
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