日本では環境にやさしいエネルギー源として、水素エネルギーへの取り組みを強化しています。
水素をエネルギー源として走行する水素・燃料電池自動車の普及にも力を入れており、国内には次々と水素ステーションが増設されています。
世界的にも注目を集める水素エネルギーですが、海外ではどのような取り組みをしているのでしょうか。いくつかの代表的な事例を見てみましょう。
- アメリカはカリフォルニア中心に水素エネルギーを導入
- 中国は商用車分野での燃料電池自動車(FCV)台数が世界一
- ヨーロッパでは電気自動車が高評価だが、燃料電池開発へも着手
アメリカはカリフォルニア州を中心に、水素ステーションの建設や燃料電池自動車の普及といった水素エネルギー導入を進めています。
燃料電池自動車の台数は日本の約2倍となっており、今後爆発的な水素ステーションの増加が見込まれています。
次の訪問先に移動する途中、水素ステーションに立ち寄り。
カリフォルニア州は日本の倍近い5千台の水素自動車(燃料電池車:FCV)が走っています。
視察の最中にも給水素に来るお客さんが。しかもナンバーが「FUEL CEL」。余程好きなんですね。 pic.twitter.com/7taY7uHGU8— 世耕弘成 Hiroshige SEKO (@SekoHiroshige) August 3, 2018
中国はバス・トラックといった商用車部門での燃料電池自動車の導入が進み、世界一の普及率を誇ります。
全国で続々とFCVバスが走り出しており、2030年には全国に1,000か所の水素ステーション設置を計画しています。
広州につづいて成都でも水素燃料バスの運転が始まった。既にこの分野も日本が先行しているわけではない。 #中国 pic.twitter.com/JNYDtcj3x8
— China Tips by myokoi (@myokoi1962) July 2, 2018
世界的な燃料電池自動車への取り組みとは逆行し、ヨーロッパでは電気自動車(EV)導入が促進されています。
ドイツでは電気自動車購入のための補助金が期限延長・範囲拡大され、さらに電気自動車の普及が進むと見られます。
一方でボッシュ社は、燃料電池自動車への参入を発表しました。
2022年には量産体制に入る体制を整え、世界の燃料電池自動車市場へ打って出る構えを見せています。
アメリカはカリフォルニアに集中
アメリカでは、全国に先駆けカリフォルニア州を中心に水素エネルギーの導入を進めています。
31か所の水素ステーション、2020年には62か所に増加
カリフォルニア州では2045年までに州内で使用される電力を全て、二酸化炭素などの温室効果ガスがでないエネルギーで賄うようにする法案を2018年に可決しました。
それに伴い、カリフォルニア州燃料電池パートナーシップ(CaFCP)は2030年までに、州内に水素ステーションを1,000か所まで増設すると発表しています。
2019年4月現在、州内の商用水素ステーションは39か所にとどまっています。
しかしすでに補助金が確定し、稼働が見込まれる水素ステーションの数を含めると62か所まで増加しています。
また日本で水素ステーションの運営に深く携わっている大手ガスメーカー・岩谷産業が同州の水素ステーション運営に乗り出し、ドイツのメッサーグループが運営していた4か所のステーションを買収しました。
岩谷産業の参入により、同州の水素ステーション事業は一気に加速していくことが予想されています。
燃料電池自動車台数は日本の約2倍
カリフォルニア州では水素エネルギー導入に伴い、燃料電池自動車の導入にも力を入れています。
2019年4月1日時点の燃料電池自動車販売台数は6,315台と、日本の2,824台(2018年9月)の約2倍となっています。
日本全体の面積は約37.8万平方キロメートル、カリフォルニア州は約42.4万平方キロメートルと、同程度の面積であることから、日本に比べカリフォルニア州は燃料電池自動車が約2倍の密度で走行していることがわかります。
カリフォルニアの水素ステーションで、FCVに水素充填。もちろんセルフです。 https://t.co/ufzSS7HxUZ
— 福田峰之 (@fukudamineyuki) September 16, 2014
トヨタ、米・カリフォルニア州でのFCV販売台数が3000台を突破。水素供給体制強化へ – https://t.co/BGCqIdjuEo(クリッカー) https://t.co/ckDhy2jDUP #カリフォルニア #California pic.twitter.com/VHyZIaVVuY
— カリフォルニアニュース (@canewsjp) January 25, 2018
世界的な水素大国を目指す中国
中国もまた、水素エネルギーへの取り組みを強化し、燃料電池自動車の積極的な導入を進めています。
商用車分野でトップクラス
画像引用:AFP BB NEWS
中国の燃料電池自動車は、バスやトラックといった商用車分野に注力しています。
2016年から2019年にかけて、中国国内では6,178台の燃料電池自動車が販売されていますが、これらのほとんどは商用車です。
2019年7月29日、中国の自動車メーカー「北京億華通科技(シノハイテック)」の燃料電池発電機を搭載した20台のFCVバスが、中国西部の都市・成都の町で走行を始めています。
さらに山東省(Shandong)、濰坊市(Weifang)、浙江省(Zhejiang)、嘉善県(Jiashan)へと、FCVバスが続々と中国全土で走行を始めています。
北汽福田汽車が新型の燃料電池バス(FCバス)を展示。全長8.5m、水素タンクを5本搭載し、10分間の水素の充塡で500kmの走行が可能。 #中国 pic.twitter.com/w9jffV5mwK
— China Tips by myokoi (@myokoi1962) April 23, 2017
上海市嘉定区の公共バス路線「嘉定114路」で、水素燃料電池車(FCV)タイプのバス車両の運行が始まった。FCVバスが運行されるのは同市初。 #中国 pic.twitter.com/3lafJsx6C1
— China Tips by myokoi (@myokoi1962) October 7, 2018
こちら水素バスのSORA。
呉市主催で実験運行。運転士さんは中国JRバスでした。 pic.twitter.com/sFocLnaXZP— 南 あ さ か ぜ (@Asakaze_Minami) November 30, 2019
2030年には1,000か所の水素ステーション設置を目標
2019年末時点における、中国全土での水素ステーション数は52か所となっています。
水素ステーション数は2020年には100まで伸ばす計画となっており、さらに2025年には300か所、2030年には1,000か所まで増加させる計画をとなっています。
それに伴い燃料電池自動車の普及も進められています。
地方の電気自動車向けの購入補助金を燃料電池自動車に切り替える動きがあります。
中央政府による個人向けの燃料電池自動車の後押しもある中、2030年には燃料電池自動車の生産台数は200万台を超え、中国における自動車生産台数の5%に達するという見込みが建てられています。
世界最大の水素ステーションが上海で完成。敷地面積は約8000平方メートルで、水素の1日の供給能力は約2トン。水素注入、タッカー車注入、燃料電池車整備・充電の機能を持つ。上海市は、2020年までに水素ステーションを5−10軒建設し、3000台の応用モデルを推進する。 #中国 pic.twitter.com/gceGFf5snu
— China Tips by myokoi (@myokoi1962) June 8, 2019
いよいよ中国も燃料電池自動車へ動き出すみたい。2021年までに長江デルタエリアの4本の高速道路に水素ステーションを設置するとのこと。2030年までに500箇所の水素ステーションが長江デルタエリアの20本の高速道路に設置される計画。近場はEV、遠出は燃料電池車という目論見かな? pic.twitter.com/RSYLDwSsY2
— 藤田康介 (@mdfujita) June 1, 2019
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重慶市初の水素燃料電池自動車がラインオフ (AFP通信)【4月18日 Xinhua News】中国重慶市初の水素燃料電池自動車(FCV)…https://t.co/8fUMdDBxq7#全国のニュース#ニュース速報#NEWS速報JAPAN pic.twitter.com/25viVNd2al
— News Japan (@NEWS_JAPAN_S) April 17, 2019
ヨーロッパは電気自動車に移行
対してヨーロッパは、電気自動車(EV)への移行を強める動きを見せています。
ドイツは補助金の延長・拡大
画像引用:朝日新聞デジタル
ドイツでは低排出ガス車の購入を促進する新車購入補助金を支給していますが、その期間を延長・対象の拡大を発表しました。
2019年5月末に2020年末まで期限を延長するとしていましたが、同11月に早くも2025年末まで延長すると発表したのです。
補助金額も引き上げられ、4,000ユーロとされていた補助金が、リストに掲載されている価格に応じて5,000~6,000ユーロに引き上げられています。
また現在約2万か所の充電スタンドに加え、今後2年間で5万か所の公共スタンドを追加設置する方針を固め、電気自動車に関するインフラ整備を強力に進める姿勢を見せています。
『電気自動車の分野での助成金の需要は2019年に大幅に増加しました。低排出ガス車は、ますます多くの市民にとって具体的な代替手段になるでしょう』
Die Nachfrage nach Zuschüssen im Bereich #Elektromobilität ist 2019 deutlich angestiegen: emissionsarme Fahrzeuge sollen für immer mehr Bürger zur konkreten Alternative werden #Emobility #Mobilität #smartunterwegs #Greenmobility pic.twitter.com/XP4Oicgh0U
— Alfreider Daniel (@AlfreiderDaniel) August 13, 2019
『電気自動車に対するより高い補助金が施行されます。新しい補助金制度は、比較的新しい中古車にも初めて適用されます。業界はそれまで購入をためらっていた顧客層の後押しとなることを期待しています』
Höhere Subvention für Elektroautos tritt in Kraft: Der neue Umweltbonus gilt erstmals auch für junge Gebrauchtwagen. Die Industrie hofft darauf, dass die bislang zögernden Kunden jetzt zugreifen https://t.co/RxCWitb6Dg
— FAZ Auto (@FAZ_Auto) February 18, 2020
温室効果ガス削減を強く進めるためEV車を後押し
2015年に「パリ協定」が締結され、世界各国が温室効果ガスの削減に向け積極的に取り組むことになりました。
「パリ協定」とは?
パリ協定(パリきょうてい、英: Paris Agreement)は、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたパリにて、2015年12月12日に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(合意)。
引用:Wikipedia
長期的に温室効果ガスの排出を削減し、地球温暖化を防ぐことを目的としたこの取り決めに対し、ヨーロッパ諸国は積極的な取り組み姿勢を見せ、自動車の面でも強い施策を打ち出しています。
電気自動車の先進国であるノルウェーでは、2025年以降は電気自動車のみ販売を許可する方針を打ち出し、それと同時に電気自動車購入時にかかる税金の免除を進めています。
またガソリン車・ディーゼル車の販売禁止を打ち出す国もあり、オランダは2025年まで、ドイツは2030年まで、フランスは2035年までに化石燃料車の販売を取りやめる方針を決定し、それに伴い電気自動車にかかる税金の大幅な減額・免除を進めています。
ボッシュ社が燃料電池自動車へ参入
画像引用:BOSCH公式サイト
ドイツに限らず、ヨーロッパ全体で高い評価を受けている電気自動車ですが、そんな中ドイツの自動車メーカー・ボッシュ社が1億ユーロ(約120億円)を投資し、燃料電池自動車開発に乗り出すことを発表しました。
水素エネルギーを推進する世界的な情勢に後押しされたものとみられ、2022年には量産体制に入る見込みとされています。
『Powercellは燃料電池の数百万の注文を受けました』
Bosch: Powercell erhält Millionenaufträge für Brennstoffzellen
Zitat: “Die Beteiligung des Technologiekonterns #Bosch am schwedischen Brennstoffzellen-Startup #Powercell trägt Früchte…. https://t.co/KQ2VuA1XJ3
— Brennstoffzelle & Wasserstoff Deutschland (@WasserstoffH2) April 6, 2020
『#クレッチマン首相がシュトゥットガルトのフォイヤーバッハにあるボッシュを訪問。内燃エンジン、バッテリー電気、および水素燃料電池自動車の新技術を見学しました。』
Ministerpräsident #Kretschmann zu Gast bei #Bosch in #Stuttgart #Feuerbach. Es ging um neue Technologien für Verbrennungsmotoren, batterieelektrische und #Wasserstoff–#Brennstoffzellen Antriebe. https://t.co/waeZ8jLuXM pic.twitter.com/m1lxQ7TA2z
— Landesregierung BW (@RegierungBW) February 21, 2020
『水素はまだ高価なものですが、中期的にはバッテリーの代替品となるでしょう。ボッシュは燃料電池を大量生産したいと考えています。市場投入は遅くとも2022年に計画されており、2030年までにグループにとって10億ドル規模のビジネスになるはずです。』
#Wasserstoff – noch teuer, aber mittelfristig eine Alternative zur #Batterie. Bosch möchte #Brennstoffzellen in Großserie produzieren. Spätestens 2022 ist die Markteinführung geplant, bis 2030 soll es für den Konzern ein Milliardengeschäft werden. Via @ZDF https://t.co/s97gfITp3T
— BoschPresse📰 (@BoschPresse) September 16, 2019
燃料電池自動車のメリット・デメリットや、ガソリン車との比較はこちらの記事で詳しく解説しています!
日本の水素ステーション整備状況については↓